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今から思えばすべてが夢なのかもしれない。
「彼女」を見かけたことも。
「彼女」の後をつけて、あの店に入ったことも。
そして、今、こうして自分のものではない身体を見下ろしていることも。
だけどこれは夢ではありえない。
この感覚は果てしなく現実のものだった。
俺は自分の胸を触って、興奮してしまっている。
夢の中でこんなにも興奮状態を続けられるはずもない。
これは現実だ。
たとえ夢だとしても、限りなく現実に近い夢だ。
それとも、俺が30を過ぎたばかりの佐藤勇一という名前の男であったという記憶の方が幻なのだろうか。
俺は元から女で、たったいま永い眠りから目覚めたのだろうか。
人間の記憶など当てにならない。
そんな言葉が頭の中に蘇る。
そう。
それは「坂上由姫(さかがみ ゆき)」の言葉だった。
「由姫」を街外れで見かけたことから、俺はあの場所に迷い込んだ。
そして、「由姫」が俺に話したことを思い出す。
「彼女」は……。
『あたしは、その世界をあなたのために作ることに決めた』
これが、その世界なのだろうか。
■ ■ ■
交 換 願 望

作 フレッシュイア
■ ■ ■
会社の出張で、故郷の街の近くまで来た。
両親は他県に引越したので、俺が故郷に帰ってくるのは、実に10年ぶりのことになる。
商談をなんとかまとめた俺は、帰京を一日伸ばすことにして、夕暮れの故郷の街をさまよっていた。
この街は元は城下町で、田舎ではあるけれども、商店街はそれなりににぎわっていた。
大学に進学するまで暮らしていた街を、俺は懐かしさもあってぶらぶらと歩いていたのだ。
そうして、俺は「彼女」を見つけた。
「彼女」という言い方が適当なのかどうかは、定かではない。
少なくとも俺にとっては、「彼女」は女だ。
「坂上由姫」が車道で隔たれた反対側の歩道を歩いていくのを見かけた。
俺はどきりとした。
「彼女」は、中学のときの同級生だ。
高校は別のところに進学したので、かれこれ15年ほども直接会ったことはない。
だけど、俺は「彼女」を認識することができた。あの「女」は「坂上由姫」だと。
中学の頃とはまったく異なった身なりをしているのにも関わらず、「彼女」だと分かったのだ。
そう。
「彼女」は完全に女の身なりをして歩いていく。
銀座でホステスをしていると言っても疑われないような身なり。
中学のときの「彼女」は、とてもそんなふうではなかった。
時はもう15年も経過している。
それだけの時間があれば、心境の変化、環境の変化はそれぐらいのことを許すだろう。
たとえ、「彼女」が本当に女になってしまったのだとしても、それほど驚いたことではない。
俺は「彼女」の後をつけた。
「彼女」が本当に女性として生活しているという想像は、仕事で疲れた俺の心を一気に奮い立たせたのだ。
本当は男であったはずの「彼女」が、女として生活している。「彼女」の今を見届けなければいけない。
「坂上由姫」は颯爽と歩いていく。
まるで女であることを誇るかのように、コツコツとハイヒールの音を響かせて歩いていく。
銀座のホステスのような派手な身なりをしているのに、誰も「彼女」のことを振り向かない。
まるで、そこに存在していないかのように。
もしかしたら、幻だろうか。俺が久しぶりに故郷に帰ってきたことで、俺の脳が生み出した幻影なのか。
思わず非現実的なことを考えてしまう。
そんなはずはない。「彼女」は、存在している。
「彼女」の後をつけるという行為に俺は興奮していた。
「彼女」は、この十年来の俺の性欲の対象だった。
どんなにセクシーなグラビアアイドルだって、俺にとってのランクは「彼女」よりも格下だった。
「彼女」に勝る女性はなかった。
そういった俺の倒錯した性指向が、30になってもいまだに彼女が一人もいないという結果を生み出しているのは間違いなかった。
そう。
俺の性的対象は倒錯している。
中学のときの「彼女」は女ではなかった。
「彼女」はレッキとした男だったのだ。
「彼女」が男だという印だって見たことがある。
修学旅行のときだ。
中学三年生になって俺と同じクラスになった「彼女」は、根が暗かった。
「彼女」は、格好のいじめの対象になってしまった。
特に修学旅行のときのあの一件は酷かった。
「お前、本当に男なのかよ。チンチン見せてみろよぉ」
いじめっ子の言葉が脳裡に蘇る。
風呂に入るときは、みんな腰にタオルを巻いていたのだけど、「彼女」はいじめっ子にタオルを取られてしまった。
可哀想に、「彼女」は級友たちみんなに、その男の印を見られてしまった。
見られただけじゃない。
「彼女」は、いじめっ子にソレをしごかれて、射精までさせられてしまった。
酷い話だ。
だけど、俺がいじめっ子に対してとやかく言う資格はない。
いじめっ子の行為を止めようとしなかったという意味で、そこにいた奴らはみな、共犯なのだ。
いや、むしろ俺は、それを見て笑って、囃していたかもしれない。
とにかく、その事件がきっかけで、俺の中に不思議な倒錯感覚が芽生えてしまったことは確かだ。
あるいは、その前から感じていた何かが、その事件で取り返しのつかないくらいに膨らんでしまった。
断っておくが、俺は決してホモではない。
「彼女」以外の男を性欲の対象として見たことはない。
もちろん、「彼女」を性欲の対象に感じ始めたときには、もしかしたら自分はホモなのではないかと悩んだこともある。
だけど、「彼女」以外の男には、決して性欲を抱かなかった。
「彼女」だけが特別なのだ。
そうなのだ。
「彼女」の顔だちは、本当に女の子のようだった。
身体も華奢だったので、女の服装を着さえすれば、女だと言って通った。
実際にそうだった。
女の服を着たときの「彼女」は、他の女生徒の誰よりも、本当に女の子らしくて可愛かったのだ。
女子の制服を着させられた「彼女」が、少しばかりはにかむようなそぶりを見せるのも、女の子らしかった。
そう。
俺にとって「彼女」は、女なのだ。
女に対して性欲を感じているのと、なんら変わるところはなかった。
そして、その女であるはずの「彼女」の股間には、男のシンボルが生えているという不思議。
それを見てしまった俺は、「彼女」の虜になってしまった。
女なのに男、男なのに女、そういうものが俺の性欲の対象になってしまったのだ。
もちろん、「彼女」と交際をしようとしたことはない。
それは許されないことだ。
なにしろ「彼女」は本当は男なのだから。
中学生のころの俺に、男に告白するなんて間違ったことができるはずもなかった。
告白の代わりに、俺はただ「彼女」をからかうだけだった。
「彼女」から見れば、俺はいじめっ子の一人だったかもしれない。
中学を卒業して、「彼女」に会うことがなくなってからも、俺は「彼女」のことを性欲の対象にし続けた。
高校の頃の俺は、「彼女」の写っているクラス写真を見て、卒業アルバムの中の「彼女」を見て、毎日のように俺は自慰を続けた。
ほとんど写真の中の「彼女」だけが俺の性欲の対象だった。
いや。
もう一人。
もう一人いた。
同じクラス写真に写っている女。
「坂上由姫」と名前を交換した女だ。
■ ■ ■
■ ■ ■
「坂上由姫」を追いかけているうちに、いつしか俺は、どこなのか分からない路地にいた。
子供の頃に住んでいた街なのに。迷うなんてことはありえないはずなのに。
俺は見覚えのない道を歩いていた。
いつしか日も暮れて、辺りがもやに包まれているような気がする。
「彼女」がいまどんな生活をしているのか興味があった。
男であったはずの「彼女」が、今は女として、そして、もしかしたらホステスとして生活しているという想像。
その想像に興奮して、身体がガクガク震えてしまうほどだった
「彼女」を見失ってしまった。
この付近のどこかの建物に入ってしまったのだろう。
「彼女」はどこかのバーに勤めているのに違いない。
もしかしたらゲイバーのようなところに。
確かにその付近には、そういう風な店であっても不思議ではないような建物が並んでいた。
一軒一軒店を確かめていくしかない。「彼女」が勤めている店があるはずだ。
そして、一つの店の看板に目が留まった。
『とっかえ・バー』
それが店の名前だった。
直感的にここが「彼女」の店だと感じた。
性的に倒錯したものを性欲の対象にするようになった俺は、当然、その店の名前の意味するものの由来を知っていた。
たとえこの店に「坂上由姫」がいなかったとしても、入ってみるだけの価値があるような、そんな気にさせるのに十分な店の名前だ。
俺はその店の扉を開ける。
中は普通のバーのようだった。こぢんまりとした店だ。
ここは、ゲイバーの類なのだろうか。
店の奥にあると思われる部屋からは、オカマがしゃべるような声が聞こえた。
入ってすぐのところにあるスペースには、お客らしい人はいなかった。
店の奥にある部屋の敷地の方が広いらしく、客のものと思われる笑い声が聞こえてくる。
店の幅は大してないけれど、左側にあるカウンタに椅子が四つ、その横にもテーブル席が三つ並べられるほどのスペースがあった。
カウンタにはマスターらしき人がいて、入ってすぐのレジには男がいた。
「いらっしゃーい。初めての方ね?」
カウンタ席に座ってタバコをくゆらせていたウェイトレス風の服装をした女が立ち上がって、俺の元にやってきた。
俺はあやふやに返事をする。
「うふふ、店の名前に惹かれてご来店かしら? 多いのよねぇ、そういう人」 ウェイトレスが言った。胸に付けているハート型の名札を見ると、「美穂」と書いてあった。
「それじゃ、初級コースとして、あたしがお相手しようかしら?」
俺はまたもあやふやに返事をする。
俺は「坂上由姫」が店の中にいないかを探した。
しかし、少なくとも見える範囲にはいなかった。
この店ではないのかもしれない。
そう思った俺は、振り向いて店を出て行こうとした。
そのとき、レジの前で作業をしている男と目が合った。
男はタキシードを着ていた。
誰かに似ている。俺は思った。
その男は俺を見てにやりと笑ったあと、そそくさとレジから離れて、カウンタの側にある右奥の扉を開いて出て行った。
俺ははっと気付いた。
あの「男」は、坂上由姫だ。
「坂上由姫」と名前を取り替えた、本当の坂上由姫だ。
事前に「坂上由姫」を見ていなければ気がつかなかったかもしれない。
それほど、「彼」は変わっていた。
中学のときの「彼」は、正真正銘、女だったはずだ。
昔の「彼」は、ボーイッシュにしてはいたけれど、近くで見れば可愛らしいと言える顔立ちをしていた。
その「彼」が、すっかり男を装っている。
もっとも、「彼」は、中学のときから、いわゆる80年代的なスケバン風で、男っぽく振舞っていたけれど。
「お客さん、どうしたの? 彼と知り合い?」
俺の思考を、ウェイトレスの美穂が遮った。
「いや、まあ……。えっと、じゃあ、初級コース、お願い」
「おっけ。楽しませてあげるね」
「彼」がいるということは、「坂上由姫」もいるはずだ。
そんな偶然はいくつも起こりえない。そう思った俺は、この店のサービスを受けることにした。
「それじゃこちらのテーブルへどうぞ。ウィスキーボトルあるけど、どうします?」
「いや、出張でたまたま来ただけなんだ。ボトルはやめとくよ」
「あら、残念。じゃ、とりあえず、水割り、オンザロックで作るね。そこに座っててよ」
俺はテーブル席に腰をかける。
カウンタとテーブルには俺以外に客はいなかった。
他の客はみんな店の奥にあるらしい部屋にいるようだ。にぎやかな笑い声が聞こえてくる。
奥の方の客は、中級以上のコースということなのだろうか。
カウンタの方では、マスターとおぼしき「男」(本当は女なのかもしれない)が、スティックで氷を割っている。
ウェイトレスの美穂がカウンタにもたれながら、俺に話しかけた。
「えっと、名前教えてくれるかな。お客さんの名前。名札つくったげるから」
「名札?」
「うん。そういうサービスなの」
「えっとね、名前は佐藤勇一。勇ましいに、数字の一」
「おっけ。あっ、あたしの名前は、水島美穂でーす。覚えといてね」
偽名を使おうかと思ったけれど、名札を作ってくれるということだったので本名を名乗ることにした。
彼女がスペード型のプレートを取り出して、そこにマジックで字を書いている。
俺の名前を書き込んでいるのだろう。
「でーきたっ。はい、勇一さんの名札。胸に付けといてくれる?」
俺は言われるままに胸に名札を付けた。
昔の素人参加番組でよく使われていたような名札だった。
なんだか名札が妙に大きくて少しばかり恥ずかしい。
そういえば、この店はどんなタイプの店なんだろう。
「はーい、水割りおまちどお。おつまみはとりあえずかっぱえびせんなのだー」
水島美穂のキャラがいまいち分からない。
それにしても、このお皿一盛のかっぱえびせんでいくら取られるのだろう?
何も考えずに入ってしまったが、ぼったくりの店だったらどうしよう。
今いくら金を持っていただろうか。
おそらくいるであろう「坂上由姫」に早く会わせてもらった方がいいかもしれない。
かっぱえびせんを摘んで何気なくそう思っていると、美穂が俺の隣の椅子に座った。
「勇一さんは、いま何歳?」
そんな質問から始まって、俺の個人情報を聞き出そうとする美穂。
まあ、とりあえず、話のきっかけが欲しいのだろう。
俺は適当に虚実を織り交ぜながら相手をした。
一通りこちらの自己紹介が終わると、今度は水島美穂が勝手に自己紹介を始めた。
それによると、年齢は21歳(むしろそれより若そうに見えるが)、BWHは上から83・62・87、この店に勤めだしてからまだ数ヶ月程度とのことだった。
彼女はいわゆる面長の美人といった感じであるけれど、性格はずいぶんと開けっぴろげだ。
スカートをはいているのに股を開いていて、向こうから見たら下着が丸見えだろう。
そういうサービスなのだろうか。
俺の手を握って、わざと彼女の股間近くへと誘ってくる。
女に慣れていない俺は、少しだけドキドキした。
そして、彼女は言った。
「じゃ、お互いの素性も分かったことだし、そろそろ、トッカエますか」
そう言って、彼女はカウンタの方を振り向く。
彼女がカウンタにいるマスターを呼ぶと、マスターは、ほいきたという感じで屈みこんで、棒状のものを取り出して、それを美穂の方に投げた。
美穂が慣れた手つきでキャッチしたその棒は、赤と白に彩られ、まさしく、ドラえもんの秘密道具『トッカエ・バー』そのもののように見えた。
といっても、本物のそれを見たことなんてないのだけど。
「トッカエ・バー!」 美穂が威勢良く言った。おそらくドラえもんのまねをしているのだろう。
「じゃ、トッカエようね。そっちの端を握ってくれる」
どきまぎしている俺を見て、美穂はニヤニヤ笑いながら棒の片一方を俺に突き出してくる。
まさか、これを握ると、本当に美穂と身体が入れ替わるのか。
そんなはずはない。
いくらなんでもそんな非現実的なことが起こるはずがない。
そうは思いながらも、心のどこかで期待してしまっている俺。
今目の前にいる水島美穂のボディに俺がなる……。ああ……。
俺はギクシャクしながらも、その棒の端っこを握った。
……。
何も起こらなかった。
目の前には依然として水島美穂がいた。
当たり前だ。それが現実というものだ。
目の前の美穂は、胸に付けている名札をせっせと外していた。
「はい、そっちも名札を外して」
俺は言われるままに自分のつけていた名札を外す。
名札を外すと、美穂がつけていたハート型の名札を手渡された。
「はい。トッカエましょうね」
そういうと、美穂は、俺がつけていたスペード型の名札を自分の胸に付けた。
もちろん、その名札には「勇一」と書かれている。
そういうことか。
合点がいった俺は、苦笑いしながら、「美穂」と書かれたハート型の名札を自分の胸に付ける。
「はい。これであなたが水島美穂で、あたしが佐藤勇一だよ。分かった?」 そう言って、美穂はウィンクした。
「ああ、分かったよ、勇一さん。俺が水島美穂なんだね」
「そうそう、オレが商社に勤めている30歳の佐藤勇一で、あんたはこのバーで働いている水島美穂さ」 美穂が今までと口調を変えて言った。
俺は自分の胸につけた美穂の名札を見る。
子供だましではあるけれど、こんなものでも俺はドキドキしてしまっていた。
さっきまで美穂がつけていた名札を俺がつけていて、変わりに美穂は俺の名前を書いた名札をつけている。
名札に書かれた「美穂」という文字を見て、「俺は美穂だ。俺は美穂だ」と暗示をかけて、本当に自分が美穂という名前だという気分になってみる。
それは、俺が良く妄想している類のことでもあった。
「ほんとだ。あたし、美穂だわ。勇一さん、あなたがあたしの身体になっているの?」 俺は、その気になって冗談っぽく言った。
「あはは、やるぅ」 美穂が言った。「じゃあ、美穂。あんたはウェイトレスなんだから、そろそろ別のつまみを持ってきてくれるかな? かっぱえびせんはもう飽きたぜ」
「はーい」 俺は立ち上がる。「何がいいかな?」
「おう、なんでもいいぞ。豪勢に行こう。なんならボトルも開けちゃおうかな」
「それはやめた方がいいと思うよ、勇一さん」 俺は言った。
俺はカウンタに向かってマスターに呼びかけて、とりあえず枝豆を出してもらい、他にも適当につまみを出してもらうように言った。
「あれぇ。あんたウェイトレスなのに、なんで背広なんか着てるんだ? それは俺が着なくちゃいけないだろう?」
カウンタまで枝豆を取りにいった俺に向かって、美穂が言った。
それを聞いたマスターがクスリと笑った。
マスターが言う。
「あなたのノリがいいから、中級コースに変更みたいですね。どうなさいます?」
「えっと、じゃあ、俺があのウェイトレスの服を着るってことなのかな? とてもじゃないけど、俺にはあれ着れないでしょう?」 俺はマスターに小声で言った。
「ちゃんとご用意してありますよ。あなたの体型でも着れる服が」
俺は納得した。
要するに、ここはそういうコスプレの店なんだな。
おそらく、店の奥のスペースでは、上級向け、あるいはもっとハードなプレイがなされているのだろう。
俺の得心顔を見て、マスターがまたクスリと笑った。
「では、そこの扉から出ると、着替え室がありますので」
「おおーい、なにごちゃごちゃ言ってるんだ、美穂ちゃん。さあ、着替えよう着替えよう」
水島美穂に促がされて、俺は入り口から向かって右側にある扉を開けた。
薄暗い回廊を渡って、また別の扉をあけると、そこは衣裳部屋になっていた。
たくさんの衣類、そしてランジェリーが処狭しと並んでいる。
美穂が、いくつか掛けられているウェイトレスの制服から適当な大きさを見繕って俺に渡した。
「美穂の体型だと、これくらいがちょうどいいだろうね。じゃ、美穂。服脱いで」
俺は自分の着ている服を脱いで美穂に渡した。パンツとシャツ一枚の姿になる。
美穂は俺の服についている美穂の名札を外して、俺に渡した。
「ランジェリーはどうする? 好きでいいけど」
「ランジェリーは……。とりあえず、制服だけでいいよ」
「おっけ。じゃ、着替えはこの中で。覗いちゃだめだぞ。男の裸を見たって面白くないだろうけどな」
美穂がくすくす笑いながら、着替え用の仕切りの中に入ってカーテンを閉めた。
俺も隣の仕切りに入った。
そして、俺はウェイトレスの制服に袖を通す。
美穂の見立て通り、サイズはぴったりだった。
鏡に映ったウェイトレス姿の俺をじろじろと見る。
当たり前だが、どう見ても30の男がコスプレをしているという滑稽な姿でしかない。
「美穂」と書かれたハート型の名札を胸に取り付ける。
俺は美穂だ、俺は美穂だ。名札を見つめて暗示をかけた。
「遅いぞ、美穂。まだか」
カーテンが開かれる。
見ると、美穂が俺の着ていた背広を着ている。当然ながらサイズは全然あっていない。
胸には勇一と書かれたスペード型の名札を付けている。
「ごめんなさい、勇一さん、着替え終わりました」
「おお、さすが、美穂、ウェイトレス姿がさまになってるじゃねえか」 美穂が言った。
俺達は元来た回廊を戻り、テーブル席に戻った。
ウェイトレス姿の俺を見て、マスターがクスリと笑った。
とたんに恥ずかしくなる。
そもそも俺はこんなことをしにここに来たのではなかった。
「坂上由姫」を探しに来ただけだったのに。
だけど、明らかに俺はこのプレイを楽しんでいた。
「美穂、お前っていい女だよな。上から88・58・90と来たもんだ。よだれが出てくるよ。じゅるじゅる」
「えっと、さっきと数字が変わってないかな?」
これが中級コースということは、上級だってあるはずだ。
現に店の奥には他の客がいるわけで、なにやら楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
上級コースがどんなものなのかに興味津々になっていた。
「ねえ、勇一さん、上級コースはどんな感じになるのかな?」 俺は美穂に聞いた。
「なになに? 美穂はこの店のウェイトレスなのに、そんなことも知らないのか? っていうか、何でオレが知ってんだろうな」 美穂が笑う。「ああ、そうだ、オレは実はこの店の常連だったんだ。そうだった。だから、ボトルキープしてもいいよな」
「ボトルはだめ。上級コースってどんなの? なんか奥にいる客が楽しそうで気になってるのよ」
「決まってるだろ。上級コースはなあ」 美穂の顔が真顔になった。「本当に身体ごとトッカエるんだよ」
「えっ!」
俺の心臓が一瞬止まったかのようになった。
そして、そのまま止まってしまうかに思えた鼓動は脈打ち、どんどん激しくなっていく。
俺は本当は男なのに、女の身体に……。
俺と彼女が身体を交換して、そして、アイデンティティも取り替えてしまって……。
俺は本当は佐藤勇一なのに、水島美穂にされてしまって、ずっとこの店で働くことに……。
頭の中を妄想が駆け巡り、体中の血が逆流しているかのように感じた。
「きゃはは、美穂って面白いな。マジになってるよ。そんなことあるはずないだろ。冗談だよ、冗談」
「じょ、じょーだんか……。そ、そうだよね。そんなことあるはずないよね。あはははは……」 俺は引きつりながら笑った。
本当に冗談なんだろうか。
いや、そんなことが現実にできるはずがない。
当たり前のことだ。
それが現実というものだ。
「本当はね、こうやってトッカエごっこしているのを他人に見せたり、見せられたりするんだよ」 美穂が言った。
なるほど、そういうことか。
美穂が話を続ける。
「オレは……、じゃなかった、美穂、あんたはまだこの店では新米だから、奥の部屋に行ったことはないんだけど、もうすぐデビューさせてもらえるらしいよ」
俺は納得した。
とはいえ、一時的に妄想に支配されてしまった俺は、まだドキドキとして少しばかり頭がくらくらする。
俺は、とりあえず一人になって落ち着こうと思った。
「えっと、トイレに行きたいんだけど、トイレってどこかな」
「なんだよ、美穂。お前この店で働いているのに、トイレの場所も知らないの?」
「ごめんなさい、勇一さん、教えてもらえないかしら?」
「あんたみたいにいい女が、トイレに行きたい、とか、ションベンしたい、とか、ウンチしたい、なんて直接的なことは言っちゃだめだ」 美穂がへらへら笑いながら言った。
美穂の口から、「ションベン」とか「ウンチ」という言葉が出てくるだけでもなんだか萌えてしまう俺だった。
「化粧室なら、左側の扉に入って、突き当たりにありますよ」 マスターが言った。
「ありがとう、マスター」 俺はそそくさと立ち上がる。
「美穂、ちゃんと座ってするんだぞぉ」 笑いながら言う美穂の声が背後から聞こえた。
■ ■ ■
■ ■ ■
洗面所の鏡を俺は見つめた。
当然のことだが、ウェイトレスの制服の上には俺の顔が乗っかっている。
そして、制服の中にある俺の身体は男のものだ。胸や股間を触ってみるまでのこともない。
俺はできるだけ自分の顔を見ないようにして、鏡に映っている自分、ウェイトレスの服装、そして胸に付けているハート型の名札を見つめた。
美穂と書かれた名札。
女の制服を着て、女の名前の書かれた名札を胸に付けた自分。
これは、俺が中学のときから求めてきたことではなかったか。
この場所で、それが現実のことになっているのは偶然のことなのだろうか。
「坂上由姫」、そして、「彼女」と名前を取り替えた「彼」がいるこの店で……。
俺の頭の中に、再び中学時代の記憶が蘇る。
「坂上由姫」の本当の名前は、山田武史(やまだ
たけし)といった。
中学三年生のクラス替えで、俺は彼と同じクラスになった。
彼にとって運の悪かったことに、いじめっ子の佐久間とも同じクラスになった。
そして、本来の坂上由姫も同じクラスだった。
彼の顔つきや、華奢な身体つき、そしてその仕草は、「武」という文字が示すような猛々しさとは無縁なものだった。
だからいじめられた。
彼はおとなしい性格だったので、いじめられても跳ね返すような力はなく、ほとんどいじめっ子の言うなりになっていた。
級友達は見て見ぬ振りをした。
担任の先生だってその例外ではない。
そう。
彼は女子の制服を着させられたのだ。
セーラー服を着た彼は、まったく違和感なく、それどころか、とても似合っていた。
美少年的な美しさではあったけれど、セーラー服を着ていれば女の子として通すことができた。
彼、山田武史は、坂上由姫と制服を交換させられた。
それは坂上由姫の提案だった。
山田君がセーラー服を着たら可愛いんじゃないかな。そんな感じの提案だ。
悪ガキの佐久間は面白がって、彼に無理強いさせた。
クラスのみんなが見ている前で、その最初の交換は行われた。
体操服姿の坂上由姫は、自分のセーラー服を着せた山田武史を見て、似合う似合うと喜んでいた。
クラスのみんなは苦笑して見ているだけだった。
「お前、本当は女だろう。チンチンついてないんだろう」
あまりに似合っていたので、そんな煽りも飛び出して、クラスの男たちはゲラゲラと笑った。
女子たちはいやだーと言って顔を背ける奴もいたし、我関せずとそっぽを向いている奴もいた。
中には羨ましそうに見ていた奴だっている。
それくらい彼のセーラー服姿は似合っていた。
坂上由姫は、彼にセーラー服を着せたまま、自分は彼の詰襟の男子の制服を着た。
そして、二人はそのままその日の授業を受けた。
先生達はぎょっとしていたが、あまりにも彼のセーラー服姿が似合っていたからか、先生達も苦笑を見せるものの、いつもどおりに授業は過ぎていった。
放課後、自宅へ帰るときには、山田武史は自分の制服を返してもらった。
二人とも、さすがに家にまでお互いの制服を着ていくことは躊躇したわけだ。
しかし、それはその日だけでは終わらなかった。
毎日登校すると、彼は制服を坂上由姫と交換させられた。
放課後になると、また彼は自分の制服に着替えて帰るのだけど、それは毎日続いたのだ。
彼もすっかり慣れてしまったようにさえ見えた。
そして、それはエスカレートしていく。
彼は、彼本来の名前で呼ばれることはなくなった。
少なくとも学校にいる間は、彼はみんなから「坂上由姫」と呼ばれた。
そして、本来の坂上由姫は、自分から「山田武史」を名乗るのだった。
制服にはプラスチックの名札が縫いつけられていた。
制服を交換するということは、名札も交換しているということだ。
彼はやっぱり面白がられて無理強いさせられたのだろう。
彼は、「坂上由姫」と呼ばれたら返事するように強制されたのだ。
彼は逆らわずに、自らの名前を「坂上由姫」に変えた。
山田武史の名前を奪われて、代わりに、女の名前を与えられたのだ。
ホームルームで、先生が出席を取るために山田武史の名前を読み上げても、彼は返事をしない。
代わりに、坂上由姫が返事をするのだ。
そして、坂上由姫の名前が呼ばれたときには、本来の坂上由姫はそっぽを向いて、彼が返事をするのだった。
彼が本当は男で、山田武史という名前であることを知らなかったとしたら、本当に「彼女」が坂上由姫という女子生徒なのだろうと思ったことだろう。
事実、教育実習の先生は、そう誤解したままだったようだ。
本来の坂上由姫の方は面白がって、髪型もボーイッシュに変え、佐久間と一緒に男同士のようにしてたむろっていることが多かった。本当は女なのに。
近くで見れば可愛らしい顔をしているものの、男子の制服を着ているので、遠くから見れば男だと通すこともできた。
元々80年代的スケバン風の彼女は、振舞いも男を気取っていた。
そういえば、彼女は二年生のときに転校してきたのだった。
クラスは別々だったけれど、転校してきた彼女は目立った。
最初の頃はネコをかぶっていたのか、カワイコぶりっ子していたように記憶している。
だから結構彼女のファンも多かった。
かく言う俺もその一人だった。遠くから見ているだけだったけれど。
しかし(80年代にはありがちなことだけど)、三年生になった頃には、彼女もすっかりグレてしまったわけだ。
本来の山田武史と名前を交換して、男勝りに中学生活を送るくらいに。
彼女は、すっかり「山田武史」という男として通ってしまった。
放課後には自分の制服を返してもらえていた「彼女」も、いつしか、登下校時もセーラー服を着せられたままになった。
わざわざ着替えるのが面倒になったのだろうか。
親にはなんといいわけしていたのだろう。
親は、自分の息子はそういう性癖なのだ、と理解してしまったのだろうか。
なにしろ、「彼女」は誰かに聞かれたらそのように言うように佐久間に無理強いされていたのだから。
担任の先生は、いじめではないかと疑ったようで、彼らを生徒指導室につれていったことがある。
だけど、なにしろ、彼本人が、自分はこれが楽しくてやっている、と言うのだから、先生にはどうしようもなかっただろう。
もちろん、彼のその言葉も、佐久間や本来の由姫に無理強いさせられていたのだ。
いつしか、彼が「坂上由姫」で、彼女が「山田武史」という名前であるということが、当たり前のようになってしまった。
かつてのクラスメイトたちも、二人が名前を交換したという事実を忘れてしまっても不思議ではないくらい、その交換は自然だった。
だから、俺は、彼のことを、「坂上由姫」だと認識してしまっているし、どうしても、彼ではなく、「彼女」と認識してしまうのだ。
残りの中学生活で、彼が自分の制服を着ることはなかった。
夏服になっても、「彼女」は夏用のセーラー服を着て、「坂上由姫」の名札を付けた。
そのように強制されたのだろうけれど、いつしかそれが繰り返されるうちに、「彼女」にとっても、それが自然なことだと思ってしまったのかもしれない。
なにしろ、「彼女」は、テストのときでさえ、自分の名前をうっかり坂上由姫と書いてしまったほどだ。
さすがにテストのときは本来の名前を書いてくれ、と先生に言われていたのに。
いつのまにか、交換した名前の方がしっくりいくようになってしまったのだろう。
本人が混乱するくらいなのだ。
他のクラスメイトたちは、二人が名前を交換したことをちゃんと覚えていただろうか。
実際、「彼女」とあまり親しくなかった生徒たちは、「彼女」の名前は本当に坂上由姫だと思い込んでいたのではないだろうか。
かく言う俺も、「彼女」は「坂上由姫」という名前の女だという認識が、すっかり当たり前のことになってしまっていた。
そして、あの修学旅行だ。
「彼女」は修学旅行の間も、ずっとセーラー服を着ていた。
班だって、女子として人数に数えられていたように思う。
しかし、部屋割りまでは女として割り振るわけにはいかない。
さすがに、そこには先生の指導が入った。
汗臭い男たちのいる部屋で、一人「彼女」はセーラー服を着て、ちょこんと部屋の隅に座っていた。
まるで本当に女子中学生であるかのように。
「彼女」は本当は女の子なんじゃないかと心のどこかで思ってしまった。
そんな俺が、風呂場で「彼女」の股間についているものを見てしまったのだ。
そして、射精する瞬間までも……。
果てしない衝撃を覚えた。
その場はただ笑っていただけではあったけれど。
そのことが、その後の俺の性癖に多大な影響を残してしまった。
それからの俺は、性的に倒錯した対象にしか、性欲を抱かなくなってしまったのだ。
こんな滑稽な話はない。
「坂上由姫」は本当は女なのに、男の印がついている。
「彼女」は女なのに、男と一緒に風呂に入った。
そして、「山田武史」は本当は男なのに、その股間には女の印がついている。
「彼」は本当は男なのに、女の振りをして、女の子と一緒に風呂に入った。
俺はそのように無理やり頭の中を混乱させて、倒錯した自慰にふけるようになってしまった。
そして、「彼女」たちは、卒業するまで、ずっと交換を続けたままだった。
事実、卒業アルバムの中の集合写真でも、二人は、お互いの制服を着ている。
俺は、「彼女」の名前は「坂上由姫」だと認識するし、「彼」の方は「山田武史」だと認識しているのだ。
なのに、集合写真の下に書かれている名前は、それが逆になっている。
「彼女」の名前は「山田武史」になっているし、「彼」の名前は「坂上由姫」になっている。
本当は、それが正しいのに、逆になっている、と感じてしまう。
高校時代の俺は、そこに倒錯を見出して、自慰行為を続けていた。
どちらが正しいのかなんて、どうでもよくなってしまった。
卒業してから10年経って、パソコンを手に入れた俺は、その卒業写真をスキャナで読み込んだ。
そして、デジタルの中で、写真の下に書いてある二人の名前を入れ替えてやった。
それだけで興奮を覚えた。
興奮状態になった俺は、他の生徒たちの名前も、男女を逆にしてめちゃくちゃに入れ替えてやった。
それだけで、頭がどうにかなってしまいそうな興奮が俺を襲った。
俺の名前を他の女のところに持っていき、ああ、この女が佐藤勇一という名前なのだ、と暗示をかけて、それだけで精液をすべて出し切ってしまえるほどの狂乱にふけることができた。
そして、「坂上由姫」の名前を俺の写真の場所に持っていったとき、俺の頭はほとんど逝ってしまった。
俺の名前が「坂上由姫」になった倒錯に、俺は狂いだしそうだった。
そうだ。
俺は羨ましかったのだ。
俺も、女と制服を交換したかったし、名札を交換したかったし、名前を交換したかった。
デジタルの世界の中で、かつてのクラスメイトたちは、顔も名前も男女入り乱れてめちゃくちゃに入れ替えられている。
倒錯した世界に俺は酔った。
男と女がぐちゃぐちゃに入れ替わってしまう、そんな妄想に俺は酔った。
マンガや小説だって、そういう類の作品ばかりを俺は好むようになった。
俺の性的世界は、そういう倒錯に占領されてしまっている。
もし本当の意味で、男と女が入れ替わっているのを間近に見たら、たぶんこの俺は発狂してしまうのではないだろうか。
そして、その当事者が、俺だったとしたら……、俺は……。
■ ■ ■
■ ■ ■
暴走する記憶を振り払って、俺はトイレを出た。
トイレを出ると、「彼」がいた。
「彼」の名前は「山田武史」。
もちろん、本来の名前は、坂上由姫だ。
「彼」は本当は女なのに、男の格好をしている。
「彼」が俺のことをじっと見ている。
「彼」が中学のときのクラスメイトであることに間違いはない。
顔つきまで完全に男性のように見えるけれど、「彼」は本当は女なのだ。
本当は、「彼」の名前が坂上由姫……。
少し落ち着いていた気分が、少しだけ乱れた。
俺が何を言おうか戸惑っているうちに、「彼」は言葉を発した。
「坂上由姫に会いたいか?」
その声は、比較的高音だったが、それでも何も知らなかったら男の声と認識しただろう。
「彼」は本当は女なのに。
「彼」が本当は坂上由姫なのに。
「き、君は……」 どちらの名前を呼ぶべきか躊躇した。「山田武史だよね?」
「彼」はうなずいた。
「坂上由姫は、この店にいるんだね?」
「彼」はうなずいた。
「本当は、君が坂上由姫なんだよね?」
「彼」はうなずかなかった。
「俺は、山田武史だ」 「彼」が鼻で笑って言う。「彼女に会いたいんだろう?」
俺はうなずいた。
「彼」はかすかに笑みを浮かべ、そして、何も言わずに脇の扉を開き中に入った。
階段を上っていく足音が聞こえる。
「坂上由姫」に会える。
女として生活している「彼女」に会える。
それはもしかしたら、俺の性癖にとんでもない影響を与えかねないことだったが、俺の胸は躍った。
それは、初恋の人に会うのにも似た感情なのか。
いや、とてもではないが、そのような感情で近似できるようなものではないだろう。
俺は「彼」の後を追おうと思ったが、扉は鍵が掛かっているのか開かなかった。
「彼」が鍵を開けたり閉めたりしたような様子はなかったのだけど……。
俺は不思議に思いながらも、さっきの場所で待っていろということなのだろう、と思って、美穂とマスターがいる場所に戻ることにした。
元いた場所へつながる扉を開けた。
そこは、元いた場所ではなかった。
■ ■ ■
■ ■ ■
広々とした部屋。
窓のない部屋。
豪邸のリヴィングといった趣のその部屋には、高級そうなソファが並んでいる。
絨毯も高級だ。
そして、向かって正面の壁には、大きなスクリーンがあって、どこかの部屋の様子を映し出している。
スクリーンの中で、30過ぎの男が女王様とおぼしき女性にいじられている。
その二人だけではない。
その二人を見ている人もたくさんいる。
観客が、SMプレイを鑑賞しているのか。
どこかのキャバレーのような雰囲気だ。
観客は男もいれば女もいる。
年齢はまちまちだ。
かなり高齢の男もいるし、女子高生のような若い女もいる。
彼ら観客に給仕しているウェイトレスも何人かいる。
ウェイトレスは、今俺が来ているのと同じ制服を着ている。
おそらく、上級コースの様子を映し出しているのだろう。
俺は思った。
俺がいる部屋の中には誰もいなかった。
元々この部屋には、カウンタとテーブル席があるはずだったのに。
扉を間違えたのだろうか。
なにか勘違いしたのだろう。
その部屋から出ようと思って、振り返った。
しかし、そこに扉はなかった。
ただの壁になっている。
そんなはずは……。
俺は酔っ払っているのだろうか?
部屋の中を見渡したが、扉はどこにもなかった。
そんなばかな……。
俺はどうすることもできず、部屋の中に進み、ソファに座った。
頭がくらくらする。
こんな非現実的なことがあるはずがない。
たぶん、本当に酔ってしまっているのだろう。
俺はスクリーンを見た。
プレイはまだ続けられている。
女王様風の女性が、30過ぎの男を弄っている。
「もういちど、聞くよ、おっさん。あんたの名前を言いな」 女王様風の女性が言った。
「なんども言ってるじゃないの。あたしの名前は、真美。五十嵐真美なのよー」 30過ぎの男が言う。
「はっはっは、そんなおっさんのなりして、真美って名前なのか。気色悪いな」
「なによ、あなただって、本当は男なんでしょ。男の癖に、そんなでっかい胸ぶらさげて、そっちの方がよっぽど気色悪いわよ」
「んだとぉ、こいつう。一生その身体のままでいさせてやろうか、いさせてやろうか? あん?」
「いやいやいやー」
「おーそいつはいいな。そしたら、この身体は一生オレのもんだな」
観客にいた女子高生くらいの女が、これみよがしに胸を揉みながら、大きな声で言った。
「いいぞいいぞ、うばっちゃえうばっちゃえ」 他の観客が囃す。
「分かったかい、おっさん。あそこにいる女子高生が五十嵐真美なんだよ」 女王様が言った。
「えへへ、そうだぜぇ、オレが五十嵐真美だぜぇ。オレはセックスやりまくりの淫乱女子高生だぜぇ」
「いやー、そんなのいやー、そんなのあたしじゃないもんー、あたしはそんなんじゃないもんー」
「だから、あんたじゃないって言ってるだろう」
俺はスクリーンに見入ってしまった。
これがただ単にそういう見世物なのだとしても、俺にとってはとても興奮する内容だった。
これは本当にただのプレイ、ただの演技なのだろうか。
あの女子高生が狂ったような目つきで胸を揉む様子は、とても演技とは思えない。
「うふふ、ただの演技じゃないわよ」
背後から声がした。
俺は振り向いた。
そこには、「彼女」がいた。
「坂上由姫」だ。
「もっとも、お客様が楽しまれるように、多少の演技指導はしてあるけどね」
「いったい……」
「うふふ、まずはお久しぶりね、佐藤君。いえ、今は水島美穂さんとお呼びするべきかしらね、おほほ」
俺はとっさに自分の身体を見下ろす。
ウェイトレスの制服を着て、美穂と書かれたハート型の名札を胸に付けている。
胸を触ってみた。
乳房はない。
俺は俺だ。
まったく、悪い冗談だ。
「坂上由姫」がくすくす笑ってる。
「このクラブは、あたしが作ったのよ。どう? すばらしいでしょ? あなたも仲間になりたいかしら?」
「坂上由姫」が近づいてくる。
どこからどうみても、「彼女」は女性の体つきをしていた。
間近で見ても、女としか思えなかった。
本当は男のはずなのに。
「でもね、あなたには、とっておきのおしおきをしてあげるわよ」 「彼女」が言った。
いつの間にか、「彼女」の後ろに「彼」もいた。
「彼」は本当は女のはずなのに、体つきは男のものだった。
もしかしたら、俺は何か勘違いをしているのだろうか。
本当は、「坂上由姫」はもとから女で、「山田武史」はもとから男だったのだろうか。
いや、そんなはずはない。
性転換手術?
二人は、名前を交換したうえに、さらに性転換手術を受けて、性別まで交換してしまったのだろうか。
「うふふ、混乱しているわね。あなたは本当のことは知らないのですものね」
「彼女」が俺の横に座った。
「人間って、非現実的な現象を目の前にしても、自分が理解可能な形に勝手に解釈してしまおうとするものなのよね」
「なんのことだ?」
「あたしたちはね、名前を入れ替えたわけじゃないの。身体が入れ替わっていたのよ」
「な、なんだって?」
俺は「彼女」の言うことが良く理解できなかった。
「中学三年生に進級する前の春休みに、あたし、坂上由姫と、彼、山田武史の身体が入れ替わってしまったの」
「……。そ、そんなばかなこと……。そんなことが現実に起こるはずが……」
「信じる信じないはあなたの勝手よ。あたしの話を聞いてもらうわ。そして、その後は……」
「彼女」がにやりと笑った。
「彼と入れ替わってしまったあたしは慌てたわ。
起こるはずのないことが起こってしまったのですものね。
あたしは彼として、彼はあたしとして、生活を続けるしかなかった。
幸い彼は、女の子っぽい体つきをしていたから救われた面もあったけど、身体はやっぱり男。
あたしは男の子として、中学校生活を送らなければいけなくなってしまった。
彼にとってもあたしとして生活するということは、女の子として生活しなくてはいけないということ。
異性の身体で生活していかなければいけないことはどうしようもないことだった。
でも、それだけじゃない。
身体が入れ替わってしまったということは、名前まで、お互いのアイデンティティまで取り替えて生活しなくてはいけない。
誰が見ても、あたしは彼で、彼はあたしなのだから。
誰に言っても信じてもらえないのであれば、アイデンティティも入れ替えるしかない。
だけど、あたしたちは一計を案じた。
あたしがいじめにあって、セーラー服を着せられ、名前まで女の子のものと交換させられてしまった、というシナリオを作ったの。
佐久間君にも協力してもらったわ。
彼は山田君と友達だったの。
佐久間君がどこまであたしたちの入れ替わりのことを信用してくれていたか分からなかった。
でも、しばらくすると、佐久間君も信じてくれたようで、あたしの身体の山田君と仲良くやってくれたわ。
先生にもちゃんと話したのよ。
苦笑するばかりで、信じてくれていたかどうかは分からないけれど。
なしくずしに納得してもらったようなものね。
仲の良かった友達は、あたしたちの身体が入れ替わってしまっていたことをちゃんと分かってくれたわ。
時間はかかったけれどね。
他の生徒たちも、多くは、そうなんじゃないかなあ程度には、あたしと彼の入れ替わりを理解していたようだった。
あたしは、山田君の身体を持ちながら、坂上由姫という名前で生活することができたし、山田君は、あたしの身体をもちながら、山田武史という名前で生活することができた。
うまくいったと思った。
だけど、心と身体が入れ替わるなんてことを絶対に信じない人もいたわ。
佐藤君、あなたのようにね。
それは理解できるわ。
あたしだって、自分の身に起こらなければ信じたかどうか分からないわ。
だから、黙っておいた。
あたしたちが本当に入れ替わったという事実は、あまり多くの人には言わなかった。
概ね計画通りだったわ。
もちろん、あたしであるはずの人間が、あたしとは異なった人格を持って生活をしていることには、少しばかり抵抗を感じたけどね。
女であるはずのあたしの身体が男の子みたいに振舞っているのですものね。
だけど、それは山田君にとっても同じ。
男であるはずの自分の身体が女の子のように振舞うというのは抵抗があったでしょうね。
でも、身体が入れ替わってしまった以上、それはしょうがないことだった。
そこは諦めるしかなかった。
そして、性別が入れ替わってしまったことも、いつしか慣れていったわ。
あたしが男としての身体を持ち、彼は女としての身体を持った。
男なのに女の身体を持った彼は苦労したでしょうね。
慣れるのはあたしの方が比較的容易だったかもしれないわ。
だけど、それで油断してしまったのかもしれない。
あれは失敗だったわ。
あなたたち男の子と一緒に風呂になんか入るんじゃなかった。
あなたは否定するでしょうけれど、あたしはあなたにペニスをしごかれて、射精させられてしまったのよ。
人間って、ほんと都合の悪いことは忘れてしまうものよね。
人間の記憶なんて当てになるものではないわ。
もしかしたら佐藤君、あなたは、男である山田君の身体の中に女の心が入ってしまっていることを、心のどこかで認識していたのかもしれないわね。
あなたはあの事件のせいにしているけど、あなたは元から性的に倒錯していたのね。
だから、あなたは女であるはずのあたしが射精してしまうところを見たかったのかもしれないわね。
それを見て楽しみたかったのだわ。
本当にひどい人。
もちろん、あたしも、男の身体で生活していた以上、自分で自分の性欲を処理したことはある。
だけど、男であるあなたに射精させられたことで、あたしは、とんでもない心の傷を負ってしまった。
あなたがあの一件で取り返しのつかないくらい性指向が壊れてしまったように、あたしも壊れてしまったのかもしれない。
この秘密クラブを開くようになるきっかけは、あのときにできたのかもしれないわね。
あたしは倒錯していった。
あたしは、あたしの身体を、本来の自分の身体を、自分自身で犯してしまうことを夢想するようになってしまった。
高校生になると、女の子っぽかった山田君の身体も、だんだんと男らしい体つきになっていったわ。
あたしの男としての性欲も増してしまうばかり。
反対に、彼の方は、本来のあたしの身体は、どんどんと女性らしさを増していくの。憎たらしいくらいに。
そして……実際に、いやがる彼を犯してしまった。
やってしまってから、あたしはとんでもない罪の意識に襲われたわ。
彼は悔し涙を流しながら、何も言わずにあたしの前から去っていった。
本当は女であるはずのあたしに、そんな屈辱的なことをされるとは彼は思ってもみなかったでしょうね。
それ以来、彼とあたしは疎遠になってしまった。
自分自身の身体と疎遠になってしまうなんてバカなことがあるかしら。
あたしは、罪を償おうと思った。
なんとかして元の身体に戻る方法を見つけようとした。
それが償いになるのかなんてことは、あまり問題ではなかったわ。
とにかく、彼に男の身体を返さないといけないと思ったの。
それに、自分が男の身体でいたら、あたしの倒錯はどんどん増していくばかり。
心と身体が入れ替わるなんてことが起こるのだから、この世には非科学的なオカルトの世界だって、本当にあるのかもしれない。
あたしは、オカルトの世界へのめり込んだ。
心と身体を自発的に入れ替える方法を研究した。
10年以上かかったわ。
そして見つけたの。
あたしは、サタンと契約した。
あたしは、魔術を使えるようになった。
だから、あなたが心の中で考えていることも読めるのよ。
でも、お笑い種よね。
身体を入れ替えられるようになってから初めて気がついたあたしもバカよね。
そのころには、彼はもう、女の身体に慣れてしまっていたのね。
時間をかけすぎてしまった。
ものごころついた頃から数えると、身体が入れ替わってからの時間の方が長いんですものね。
彼がいまさら元に戻りたいなんて思うはずないのよね。
彼は女として……、坂上由姫として結婚してしまっていたわ。
中学生のときのあたしは、身体が入れ替わっても、坂上由姫という名前は……、あたしとしてのアイデンティティは自分のものであってほしかった。
だけど、結局、「坂上由姫」のアイデンティティは、彼のモノになってしまっていたのよね。
彼は、「坂上由姫」という女として生きる道を選んだのよ。
ここにいる彼は、あたしの分身よ。
サタンと契約したあたしのシモベ。
あたしは魔術を使って、十数年ぶりに女に戻った。
自分の性別を女に変えて、あたしの分身である彼に犯してもらったわ。
罪滅ぼしのつもりで。
何の意味もないのに。
他に魔術の使い道が分からなかったのよ。
サタンと契約した以上、魔術を使い続けなくてはいけない。
あたしはあなたのことを魔術を使って調べたわ。
あたしが壊れてしまったきっかけを作ったあなたのことをね。
そして、あなたが陥っている倒錯のことを知ったわ。
それを参考にして、あたしはこのクラブを作った。
この倒錯に溺れている人を招いて会員を増やしていったわ。
交換すること、交換されることに快楽を見出す人たちをね。
あなたの身体をもらえるかしら?
あなたのような将来性のなさそうなサラリーマンの身体に、女子高生の心を入れると面白いのよね。
あなただって、自分の身体に女子高生の精神が宿ってしまうのを想像すると、萌えてくるでしょ?
でもあなたには女子高生の身体はあげないわよ。
あなたには……。
そうね、とりあえずあなたは、水島美穂になってもらうわ。
トッカエ・バーで入れ替わったのですものね、うふふ。
あなたが、あたし達クラスメイトをおもちゃにしていることも知っているわよ。
デジタルの世界で、男女をめちゃめちゃに入れ替えていることを。
写真の中の自分に、あたしの、坂上由姫の名前をつけたときのあなたは、煙しか出ないほどまでコキまくってたわね。
うふふ。
とても面白いわ。
あたしと彼だけが入れ替わってしまったからいけなかったのよね。
もっとたくさん、それこそ、クラス中の男と女が入れ替わってしまえばよかったのよ。
あたしは、その世界をあなたのために作ることに決めた。
暇を見つけてそれを作っていたの。
それができたのよ。
だからあなたを呼んだの」
「坂上由姫」の目が、妖しく光った。
■ ■ ■
■ ■ ■
今から思えばすべてが夢なのかもしれない。
「彼女」を見かけたことも。
「彼女」の後をつけて、あの店に入ったことも。
そして、今、こうして自分のものではない身体を見下ろしていることも。
だけどこれは夢ではありえない。
この感覚は果てしなく現実のものだった。
目が覚めると俺は教室にいた。
俺が中学三年生だったときの教室とそっくり同じだ。
周りに机が並んでいる。
俺はそのうちの一つの机に突っ伏して寝ていたのだった。
他には誰もいなかった。
俺は中学のときの女子の制服だったのと同じセーラー服を着ていた。
そして、胸には、水島美穂とかかれたプラスチックの名札を付けている。
その名札には、中学校の名前も書かれていた。
その名札を見つめていると、自分が元から、水島美穂という名前だったような気もしてくる。
俺は元から水島美穂という名前の女子中学生で、たったいま永い眠りから覚めたのだろうか。
俺の肉体は女だった。
しかし、自分が男だったという記憶が、女の肉体に興味をそそらせる。
俺は自分の胸を触って興奮していた。
そして俺は思い出す。
『あたしは、その世界をあなたのために作ることに決めた』
その世界……。
これがその世界なのだろうか。
ふと気がつくと、教室の中に他の生徒がいた。
みんな俺が中学三年生のときのクラスメイトだ。
彼らは、男女逆の制服を着ていた。
男はセーラー服を、女は詰襟のガクランを。
異様な光景だった。
パソコンの中のコラージュされたデジタル画像と同じように。
しかし、彼らは写真ではない。
生身の人間だった。
生きて動いている。
『クラス中の男と女が入れ替わってしまえばよかったのよ』
彼らはきっと、身体と中身がテンデバラバラなのだ。
「坂上由姫」が作った世界。
俺は彼らがつけている名札を一人一人確認した。
男は女の名前で、女は男の名前だった。
俺は、「佐藤勇一」を探した。
「彼」がいた。
「彼」はセーラー服を着ている。
「彼」の胸には、「坂上由姫」と書かれた名札がついている。
ああ……。彼女は、『俺』になりたかったんだ。
「彼」が俺に向かってにっこりと微笑みかける。
「ねえ、水島さん。制服交換してみない? 名前を交換しましょ」
俺は承諾した。
そして、俺が「坂上由姫」になった。
FIN.
■ ■ ■
■ ■ ■
■ ■
■
あ・と・が・き
本作品は、作者であるフレッシュイアのある日の妄想を書き取ったものである。
元々は、某巨大掲示板で、女装スレを眺めていたことから始まった。
中学のときにイジメでセーラー服を着せられて、一年間そのままで過ごした、という書き込みがあったのだ。
その書き込みはただのネタかもしれないけれど、そこから妄想が飛躍したのであった。
もちろん、その内容そのままを書き取ったわけではない(そんなことは不可能だ)。
書いているうちに形を変え姿を変えた。
この作品にはトリッキーな要素が取り入れてられているが、それは最初から意図したものではなかった。
書いてみたらこうなった、としかいいようのないものである。
おそらく、この物語を最も楽しんだのは、他ならぬ作者であろう。作者の特権である。
当然のことではあるが、妄想だけですべてが構築されたわけではない。
妄想をキャッチして、それを人が読める形に再構成するためには、ある程度のテクニックが必要だ。
同じものを妄想源にしても、出力される結果は違うはずだ。
テクニックとして、同じTSF図書館に所蔵されている「TSF分類学序論」の要点を踏まえて書いた。
つまりは、そこに書かれている理論の実践である。
「分類学序論」を読んだけれどもその趣旨がよく分からなかった方も、この作品を読んでからもう一度読むと、「分類学序論」に書かれている意図が分かるかもしれない。
もちろん、それでも「分類学序論」の意図がちっとも分からなかいということもあるだろう。
それは作者の力不足によるところが大きい。
しかし、意図が分からないという方は、そもそもこの作品をあまり楽しめなかったのではあるまいか。
そのような構成にしたつもりである。リトマス試験紙のようなものだ。
その意図の詳細をここに書くことはしない。
いずれどこかに書くつもりでもあるし、誰かがその意図を汲み取ってくれることを期待するからだ。
とは言っても、それほど大したことを言っているのでもない(少なくとも作者にとっては当たり前のつもりだ)。
その方向性が大事だと思ってもらえるかどうか、賛同してもらえるかどうか、そこが要である。
エッセンスは、書いてあること自体にあるわけではない。そこから始まる「なにか」である。
2002年6月6日 脱稿
当然ながら、本作品はフィクションです。登場する人物はすべて架空のものです。
登場する人物の名前が実在する人物のものと似ている場合があるかも知れませんが、それらは多くの場合偶然です。
本作品についての、あらゆる著作権は、すべて作者が有するものとします。
よって、本作品を無断で転載、公開することはご遠慮ください。
作品の感想は、こちら(掲示板) または こちら(メール)でお待ちしております。
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