OX in free |
第一回 |
ピッキーティンキーモンキー 2 |
作 W.Q
1.元気なら、それでいいから 鼻歌のららら。 街を埋めつくす灰色の雪が溶けなくて、僕はずっとこの街に閉じ込められてる。 寒くなってきた。 僕が抱きしめる僕の体は他人の冷たさだから、それを感じる僕の僕が体のありかの不思議にそれは心の中、憂鬱だよ、しょせんは主観。 おしまいのヘブン。 僕はこの体をそう名づけた。 エンジンがかかってひとりでにの勝手、暖まってきたスーパーカーの中、窓のくもりゆきて隠れる街の雪景色へ鼻歌のららら。滑り出してメロディ、四十八コのスピーカからおせっかい。 子守唄のららら。 |
2.なんでもない、読み飛ばせ クラクションが鳴ったから僕は目が覚めたんだと思うのだけれど、それすら確かじゃないってなんだろう、この気だるさ。 毎朝、毎朝、うるさいってんだよな。まるでそっくり、持ち主だった彼へのうんざり。 仕方なく朝の日課をはじめる僕を、僕はキミに知られたくはないのだけれど、見られたいと思う欲求があるなんて寂しがりを孤独だからとは信じてはもらえない重々の承知に戸惑いのキミが目に浮かぶようだけれど、どうか? 言ってくれよ、覚えてるって、ほら。二人でおしっこを飛ばしあったことあったじゃないかってあんなノリ。例えばね、この黄色いシャツをもりあげる乳房のひとつを僕とするならば、もう片方はキミなんじゃないかってやっぱり、ほら両側から抱え込めば、僕とキミのいつでも出会える昔みたいな快感に、ちょっと先端をひねればほとばしるはオシッコじゃなくて僕の絶叫なんて光景、叫んどくからキミのぶんまで、なぁに、ちょっとしたジョークだよ。 まだひりひりとする乳首に感じながら、僕は自嘲に笑う。 キミも笑っておくれよ、寂しいじゃないか。 あ、スーパーカーがアイドリングをはじめたから振動に応えて上手に豊満なヒップをふってみせればコイツ、僕を凍死させることだけはないからってパターン、パターンの踏襲が刻み込まれていくシートの皮張りに心地よさを感じるは僕なのか僕の体なのかと毎日が疑問。 朝のオナニーが終わった。僕はスケベになっていく。 出かけようか。 |
3.僕の人生のなかが変わった日 生きていることがとても不思議なはずだねキミは、僕が。 映るんだよテレビ、こんな街でも。 今、流行ってるコマーシャルは、どちて坊やが亀に乗ってアイドルを追っかけまわすスパゲティのだよね、ほら、僕はよく知っているだろ、電波はほとんど白黒にされてしまって色はわからないけれど、黄色だけが目立つ画面に僕は世間の面影を見ている。 馴れてしまうと生まれる前のことを忘れていくように、僕はあの日の朝を忘れかけている。 三日前でフリーズ、四日目のライブ、記憶消え入る細部、サバイバルが勝負。 近所の金持ちがボンボンのお兄さんは愛車のカウンタックになっちゃった。妹、僕には妹がいたような気がするんだけど、そいつは今じゃただの黄色い生き物のぬいぐるみさ。キミとよく待ち合わせたコンビニが店員のアニキは自動ドア、いや、コンビニの建物そのものかもしれないね。 変身の日。 騒ぐ間もなく黄色い雲、降り出した雪が灰色なアンノウン、瞬く間に押しつぶされて安穏、電波のニュースが剣呑に騒ぎ立てるから僕は股間のライノホーンを握り、平穏の願掛けは布団のテント。 ロンサムにお寒い僕の暮らしに訪れた、僕が僕とのお別れ。 そして僕が最後に最高にサイコなランディング決めたのは、見知らぬ成熟した女って大事件。 灰色の溶けない雪がふって泥濘に変えてしまった街の風景に多分、僕はひとり。 キミの街に絶妙に試して絵の具の白と黒が配合、おもむろが拳骨でこねくりまわせば僕の街が完成。 その絵の中に、黄色いシャツを着たミニスカートの女を置いてくれ。 それがこの物語のヒロインというありさまの僕。 |
4.最低で最高で孤高 あの日の朝の気分は今にして思えば、オナニーをしながら目が覚めたって感じだよ、絶望にイチモツのなさって感覚はやっぱキクよね。 オナニーしながらって言ったけれど。 今、覚えてるボクの感覚はこの『おしまいのヘブン』のものだから、それは『おしまいのヘブン』がオナニーっていうことだから、間違わないでほしい。キミにはわからない感覚に突き動かされて生きている今、キミと感性現す性別は言語の行き交うことできないボクを許しておくれ。 キミとの思い出が恋しくてボクは一日に何度も、股間をかきむしるよ。 膣の孔の中からなにか引きずり出せないものかとも思うのだけれど、さっぱりが成果。 イエロー。 スカイイエローが、見える。 この街の空の色だよ、キミ。 僕は、空の色に包まれてイク。 |
5.墜落 僕は、黄色いぬいぐるみになってしまった妹を片手にカウンタックをおりる。 キミの家に遊びに行きたいところだけれど、バスも電車も僕を乗せてくれない暴走に夢中で、それはきっとどこかの誰かが乗り移った意思が仕業。 キミなら、グレイハウンドバスになりたかったのに、と言うかもしれないね。 ブーツのかき分けていく灰色の泥濘、昨日通った道なのに足跡すら残っていない不思議。街の灰色は、地上でもくもくと増えていっているようだ。 ふらつくヒールの足元にあわせて腰をふりながら歩く。誰もいないはずの街なのに視線感じる奇妙は、ヤオロズに埋めこまれた魂が瞳のしわざ。 この街でおんりー、見られる存在って僕。むくむくと立ちあがるものがある心の中は勃起の感覚にも似た自尊心がもたげ。 ちょーずん。 この勃起を愛する僕は男か女か。 左手の中、張り詰めた乳房越しに黄色いぬいぐるみが微笑んだような気がしたから僕は、「兄」のように歩こうと大きく踏み出すこと灰色の泥濘が底。足元のもがく心もとなさは、スカートの底はソコ、下着のもがきもつれる不快感。やるせなさのこみあげて僕の意識を刺激するこの感じよう、日常を見失った風景から浴びせ掛けられる視線はハング。 ハイヒールの踵がすべって前のめり、固いものに押しかえされて仰向けにばったり、灰色が雪の舞いあがり、それは黄色い空から降り注ぐシュガーボム、驚きに半開きな口の中へ、けれど味のしないことさっぱりであいむだうん。 一瞬、音のなくなった世界に舞いあがった灰色の雪はシュガーボムに見とれながらの僕、胸元でぐにゃぐにゃと形を変える乳房が振動に時までも止まったのではないということを教え、スローにふりしきるシュガーボムの結晶すら見えてしまう視界にクール感じる。 轟音が耳をうった。 スーパーソニック。 僕を泥濘の中に押し倒したのは、超音速の衝撃波だったんだ。辺りの建物の窓ガラスの破片が奏でる狂ったコーラス。 黄色い雲を引き裂いて青空、真っ白な飛行機雲を描いて軌跡、小さなジェット戦闘機が上昇。 僕に気がついて低空飛行をしてみせたアイツ、何日も飛行場で身じろぎしながら、ジュラルミンの体に戸惑いながら、ようやく飛び立つ仕草を思いついたんだろう。 キミよ、キミよ、僕の手紙をきっと心待ちにしてくれているキミよ、ハガキや鉛筆に誰かの宿り感じてなににも触れられない僕は、この手紙をポストに向かってささやく。 ポストに宿るあなた、届けてほしい。 僕の見た奇跡。黄色い雲が青空を閉ざしてしまわない間に銀色の翼をふってくれたアイツのことを、キミに伝えておくれ。 爆音が鳴った。 ジュラルミンは銀色のジェット機が、デパートメントの屋上にぶつかって四散した無残。 シュガーボム。 僕は妹を拾い上げるのに、ずいぶんと時間がかかってしまった。 |
6.恋し苦しせつな もうなにもする気がしない今日に、僕の帰る足取りは黄色いスーパーカーがねぐら。 カウンタックは翼のような扉を開いて迎え入れる。 臭う車内にでぃすあぐり、手探りに皮張りのシートへ触れればぷるすきにー。 カウンタックは十二気筒のエンジン音でもって身を震わせ、僕をせかす。 シフトレバーが闇雲に動くさまにシット、股の間から駆け上ってくる嫌悪感はパズル、僕の男のハートにはフィットしないパーツ。 銀色の翼の見せてくれたきらめきのひらめき。 それは、僕とキミが過した幼い夏の海に見た入道雲へ叫んだ場違いな「ヤッホー」の彼方から来たような、あの思い出の陽射しだ。 なまめく女体に閉じ込められて、カウンタックの狭い車内が巣に囚われた僕には遠い憧れ。 キミと昔、好きな女の子を打ち明けあったことがあったけれど、あのとき感じたドキドキを、僕はまた感じてる。 ヒートなハートがとっととパッと。 カウンタックに滑りこんで運転席、思いきり踏みこんだアクセル、後輪が空回り、ぎゃっと叫べば爆進する咆哮の方向に電柱がうぉんちゅー。 クラッシュ。 僕はジェット機のアイツに恋したから、カウンタックを壊したんだ。 エンジンから立ち上る黒い煙が黄色い雲に溶けていく。 薄黄色のぬるぬるとしたエアバックに包まれて、止みそうにないクラクションを耳にしながら、僕は眠りに落ちた。 騒々しい中で眠るのが心地よいね。 |
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